剣術・忍術の術理の応用

足は手に、手は刀に従う

古流剣術・忍術口伝「足は手に、手は刀に従う」は身体運動連鎖等からも理に適うものであることが分かります。

身体の運動連鎖

人が最も自由に扱える手腕からの身体運動連鎖を活用すれば、無駄な時間を掛けずに四肢・体幹連動を実現することができます。
手関節運動連鎖の知覚・認識を明確にすることで、「上肢~体幹~下肢」の連動の習得を容易にし、その逆「下肢~体幹~上肢」および「体幹~上肢」・「体幹~下肢」を、練度は別としても自由自在にコントロールすることができるようになります。

  1. 手関節~肩甲骨の上行性運動連鎖
  2. 肩甲骨~胸郭・脊柱への運動連鎖
  3. 肩甲骨と骨盤との連動
  4. 骨盤後傾による下行性運動連鎖
  5. スパイラルライン
  6. その他

古流剣術・忍術の手腕の身体調整機構を活用した「肩の力みの抜き方」には、立甲の本質と共通する神経活動等が見受けらます。それを使えば木刀の重さを活用して「手首~肘~肩のゼロポジション~股関節外旋」へと効率よく繋ぎ、体幹の力を効率よく出力することができます。

手関節運動連鎖の活用

身体運動連鎖を効率よく活用するためには、いくつかの方法で知覚神経系の感度を引き上げることが最も簡単でしょう。それができれば、身体の調整機構が最大限働くようになります。
例えば「木刀の重みを利用して肩の力みを抜く」場合には、要は「肩の力みが抜けることに対応する手腕の身体調整機構を知り、それを活用すればよい」だけです。

運動神経に係る特徴

下記の事実に着目し、自由自在に「肩の力みを抜く(上肢・体幹の接続・切断)」ために必要な要素を考えてみてください。

【運動神経に係る特徴:ピックアップ】

  1. 運動神経は、複数の筋繊維に繋がり、筋肉はある程度まとまって収縮する。
  2. 運動神経と繋がる筋繊維の数は、脳・脊髄から近いほど多く、遠いほど少ない。

これらの事実から、遠位(末端側)で大きな力を出そうとしたり精妙に動かそうとすると、近位(体幹側)により強い筋収縮が生じることが分かります。
逆に、遠位(末端側)の筋腱骨膜が安定していれば、近位(体幹側)への影響が少なくなることも分かるでしょう。

そのため、肘以遠(前腕より先)に一定の状態を作出すれば、簡単に「肩の力みが抜けた状態」を作出できるのです。
実際、チーターの肘以遠においては、回内外可動域が狭くなっています(参考:チーターの立甲)。

人は、古流剣術・忍術等の身体技法(横指横切、肘切断、手首のゼロポジション等)を用いれば、近位(特に首・肩・背中)の弛緩を簡単に誘導することができます。

また、弛緩誘導によって肩の力みを自在に抜けるようになると、自然呼吸を阻害する要素(特にC5~7に係る要素)が激減するため、動作中の呼吸も楽になって持久力の向上にも繋がります。
さらに、力みが抜けると「筋・腱・骨膜」の緊張などを知覚・認識し易くなるため、身体螺旋の活用が容易になり、座っていてもその恩恵を受けることができます。

螺旋・スパイラルライン

身体螺旋を活用する場合、例えば下画像左側のようなライン(実線が表、点線が裏)をイメージするとよいでしょう。

身体螺旋の活用

身体螺旋の知覚・認識に関しては、ひとまず学校でよくやっていた「回れ右」などを利用すればよいです。初めて螺旋の知覚を行う場合には、身体の七か所を順番(※逆も)に意識すると知覚力の向上が早くなるようです(2005~受講者・会員アンケート等)。この七か所を少しずつ増やし、かつ円滑に行えるようにしながら練度をあげていくと、身体能力が向上します。
螺旋の流れに乗って真後ろに肘打ちなどいろいろ試し、身体が自動でバランスをとる時の感覚なども掴めるようになるのでお勧めです。

必要に応じて受け手にミットを構えてもらい、ヒット時に上半身の重みをしっかりと股関節に乗せるよう心がけるとよいです。

手首のゼロポジション

チーターが走行する際、前肢の接地・加重によって手首の圧縮・伸張が生じます。その際の筋腱骨膜の連係が上肢構造上の強化・安定化・調整機構を起動させることになります。

※ 一般的に体重を乗せるだけの場合は「荷重」を使いますが、チーターは一定の身体状態を保持するための筋力を使っているため、当HPではあえて「加重」と表記しています。
なぜなら、チーターには鎖骨がなく、前肢の骨で胴体を支えていないからです。その他、体重が重い馬や牛、象にも鎖骨がなく、猫・犬の鎖骨は退化して機能していないというのが厳然たる事実です。

人が、チーターの前肢と同様の状態にするための「手首のゼロポジション」を使えば、手の機能発達によって鳴りを潜めていた生来の「握力把握」によって、肩甲骨・骨盤の連動が阻害されることなくスパイラルライン(特に~肩甲骨~前鋸筋~5~9肋骨~外腹斜筋~浅腹腱膜板~白線~内腹斜筋~腸骨~)の連係がより円滑になります。

「握力と前鋸筋の正の相関関係」から、螺旋(スパイラルライン)を楽に活用する方法も簡単に想像できるでしょう。
「適切な知識に基づいて意識して使い、それを常態化する」、すなわち、有意識で練習・鍛錬し、無意識でそれが生じる身体状態を作り出すことが重要です。

「手首のゼロポジション」は知識があれば簡単にできる程度のものですが、それを利用した肩周りの筋肉群等の弛緩誘導は、上肢を使うスポーツ等ですぐに効果が確認できます。
例えば、螺旋連係の円滑さが表れ易い動作(抜刀斬など)での動作確認がお勧めです。

座位(下肢の補助を制限)での抜刀斬で、「1:握力把握確認、2:コンパクトに、3:立ち上がりながら」で動作確認(握力把握~肩甲骨~股関節~肩甲骨~)を行っています。
座位ですから上半身の重みを座骨アーチで支えるようにすると頭部が安定して軸ブレが抑えられます。

手首のゼロポジションは**骨の「******」の圧縮・伸張を利用します。ここで重要なのは「手の骨一つを適切に少しズラす」ことです。
骨一つを少しズラすだけでディープバックアームライン(DBAL)を簡単に扱える状態を作り出せるため、肩こり改善にも効果的です。

ただ、それを最初から知覚・認識することは難しいため、まずは*指一本に掛ける意識によってそれを実現することになります。

PAGE TOP