大和神流 忍体操術 零式
立甲 ゼロポジション 肩甲骨はがし 甲腕一致

はじめに

赤子の頃の上肢の緊張・弛緩状態、すなわち「生来の四肢・体幹連係の運用法」を理解すれば、拙いながらも脳がその身体運用を開始することとなります。
これにより誰でも短時間で有用な【高出力・高安定性】の活用が可能になります。

誰もが、
乳幼児期 ~ 学童期くらいまでは特にトレーニングなどせずとも【上肢・体幹の強化・安定化・調整機構による連係力】を自然と活用できていました。

ところが、
成長・日常生活等によって「生来の上肢の緊張・弛緩状態」に変化が生じざるを得なくなり、次第にその【力】が損なわれることとなりました。

これを予防・回避または再び使えるようにするためには、「事実・知識・考える力」を蔑ろにしないように気をつけなければよいだけです。
それさえ怠らなければ、無知・浅慮が原因となるケガや故障リスク、無駄な時間の浪費を簡単に排除できます

立甲

立甲とは「肩甲骨が立った状態」のことと言われますが、単に肩甲骨が立てばよいわけではありません。

× ]  肩甲骨が立つ(立甲)から、ハイパフォーマンス

] 筋・神経活動に係る筋・腱・膜の連係によって自然に肩甲骨が立つ(立甲)身体状態にあるから、ハイパフォーマンス

このことは下記などから理解できるでしょう。

  1. 翼状肩甲(前鋸筋・僧帽筋麻痺等が原因の疾患
  2. チーターや猫が最大のパフォーマンスを発揮する時には必ず握力把握(※)に係る筋・神経活動を伴う
    すなわち、それによる身体相関が必ず生じる

※ 握力把握 = パワーグリップ(ネイピア分類による)。また、身体相関が生じる事実は医学研究結果等から明白。

肩甲骨の立った状態(立甲)は【身体動作の一態様】

肩甲骨が立った状態(立甲)は、身体動作の一態様です。
すなわち、
前肢(上肢)・体幹には筋・神経活動に係る筋・腱・膜の連係等が必ず生じています。

身体動作とは
脳・脊髄からの電気信号(神経活動)による筋肉の伸縮活動のこと。
基本的に、筋肉は神経細胞の電気的な興奮・静止状態により、
縮む(ON)・緩む(OFF)」の二通り

なお、脊髄反射は、刺激を受けて感覚神経が活動電位を脊髄に送り、脳を介さず運動神経に伝達され生じる。

身体動作の一態様ゆえに、当然、立甲が生じうる神経系の活動による筋肉等の伸縮活動(緊張・弛緩)が存在します。

それゆえ私のような凡人でも簡単に活用できることとなります。
※ 手首の過伸展に係る弊害の解消法等が特に重要

ゼロポジション 立甲 肩甲骨はがし 天使の羽

必要なことは、事実・知識に基づいてしっかりと考えることです。
肩甲骨の動きや可動域は、単に柔軟性があればよいというわけではなく、手腕の緊張・弛緩の組み合わせによって身体相関を利用し、肩関節周りの緊張・弛緩を自由に制御することも必要です。
つまり、
柔軟性が必要な時、必要な部位に、それを自由に引き出すことも可能であるということです。

肩甲骨トレーニング_下方回旋・上方回旋・内転・外転

着目すべきは生まれながらの上肢・体幹・下肢の締まりです。
特に、腸腰筋群(大腰筋・小腰筋・腸骨筋)の収縮と連係する手首の締まりは重要です。

ただ、手首の締まりは機能発達に伴う弊害によって損なわれ易いので注意が必要です。

チーター等の四足歩行動物はパワーグリップを使い続けることでその締まり(それによる連係を含む)を維持します。
しかし、人は手の機能発達に伴って精密グリップを多用し余計な力みが生じることとなり、次第にバランスが崩れて四肢体幹の連係に重要役割を呈するな締まりが損なわれていきます。
例えば、肋骨を紡錘形にしっかりと引き締めている緊張・弛緩も損なわれ易くなるので注意が必要です。

手の機能発達の結果として、自然と立甲する身体の緊張・弛緩状態を失っていくことになります。

明確にパワーグリップを使うだけでも首・肩に生じる力みを激減させることができ、肩こりや首こりに繋がる身体の負の連鎖を止めることもできます。

本質の理解を伴う場合とそうでない場合とでは、身体操作の練度の向上速度に雲泥の差が生じるので注意が必要です。

脱力に関する注意点

身体操作において、
言葉による弊害(身体への負担・故障リスクの増加等)を被り易いものとして「脱力」が挙げられます。

理由は簡単、
スポーツや武道などの身体動作において重要とされる【脱力】は、
一般的な言葉の意味とは異なるからです。

「脱力」の一般的な言葉の意味:
「体から力が抜けること、またそれによりぐったりしてしまうこと」、
「気力や意欲が衰えること」、
「締まりや緊張感がなくなること」等

スポーツや武道においての「脱力」は、
肩の力(主に伸筋に係る神経活動)や余計な力みを抜く。」
ということです。

身体の重要な筋収縮を止め、あって然るべき “身体の締まり” をも解いてしまうことではありません。

たとえば、
スポーツ・武道等の試合中にすぐに動ける体勢で構えている場合を考えて下さい。

監督・コーチ等:「もっと肩の力を抜け! 脱力しろ!」
と言われたからといって、【筋収縮を解いて両腕をだらんと下げてしまう(構えを崩す)】ような者はまずいないでしょう。
通常は【(構えたまま)余計な力みを抜く】はずです。

そもそも、
脳は、基本的には「力を【抜け】」という命令ができません。

「強い力を出した状態からそれを弱められるから、脳は力を【抜け】という命令ができる!」
と思えるかもしれませんが、実はそうではありません。

実際は「 “弱” の目盛りの力を出せ!」と命令しているのです。

筋肉が収縮している以上、当然神経細胞は電気的興奮状態 = ON です。
※ 静止状態でも筋電位は生じる(= 細胞内が細胞外に対し約60~70mV マイナス)。

肩甲骨操作:ゼロポジション・立甲における神経細胞のスイッチ

ご存じのように、
身体には下記のような「常に生じている筋収縮等(= 筋・腱・膜等の緊張・弛緩)」があります。

  1. 呼吸・拍動等、“生命維持活動” に関与する筋収縮等
  2. 抗重力筋等、“姿勢保持” に関与する筋収縮等
  3. その他の反応等

以上を踏まえ、
【筋収縮を止めてしまう脱力】で四肢・体幹の連係を損なわないよう気をつけるようにしましょう。

チーター・猫・人の赤子の立甲時、
すなわち、
地に前足(手)をついて体重を乗せ前に進む時には、必ず把握動作に係る筋・神経活動が生じます。

それゆえ、
チーター等の立甲時には、必ず肩甲胸郭関節関与筋がしっかりと活動しますから、これによって必ず肩甲骨が安定します。

つまり、
チーターや猫・赤子の「立甲」は、翼状肩甲などの疾患によって肩甲骨が立つのとは全く異なる状態です。

この事実から、
手腕の運動全般に関与する回旋筋腱板(ローテーターカフ)も円滑に作用することになるのです。
※ 回旋筋腱板の円滑な動作には肩甲骨の安定が不可欠

チーターの立甲

チーターや猫の立甲時(主に歩行・走行時等)には、
必ず
前肢と肩甲胸郭関節関与筋群(特に前鋸筋)に筋・神経活動の連係が生じます。

そのため、その連係に係る張力(主にDBAL等)によって肩関節群の円滑な動作が確保でき、かつ、体幹や後肢の筋・神経活動を介して地の反力等も活用できることとなります。

上記は、哺乳類として同じ基本構造を持つ人にも当てはまります

そのため、
チーター・猫・人の赤子の立甲と同様の筋・神経活動による立甲であれば、「立甲すると肩甲骨が不安定になる」ということはあり得ないので安心です。

人は立甲できる必要がない?

立甲不要の根拠として主に下記がよく挙げられています。

①「チーターなどの四足動物と人では身体構造が違う。」
②「人は二足歩行だから立甲できる必要はない。」

、、、

そもそも、チーターや赤子のように前肢(上肢)が特定の状態にあれば、自然と肩甲骨が立ちます。
それは、特別なことやトレーニング等によって生じるものではありません。
例:乳幼児期~児童期など

重要なことは、自然に肩甲骨が立つ・立甲する身体状態にあることです。

サラッといきましょう。

人もチーターも哺乳類。
哺乳類の前肢後肢は、各々の生態に適応した形態をとってはいても、どの種でも同じ基本構造を持つ

人は二足歩行だが、チーター同様、四肢(四足)動物。
言うまでもなく身体動作(筋・神経活動)に伴って前肢・体幹・後肢が連係する。

その他、
前肢・体幹の筋・神経活動の相関、運動連鎖(上行性・下行性等)、肩甲骨・骨盤の連動性、走る際に腕振りが有用なこと等、
事実・常識等に基づいて考えればよいだけですね。

もちろん、
人が二足歩行ゆえに注意を要する部分もあります。
(参照:次の記述「四つん這いに係る注意点」等)
しかし、
それらは立甲不要に直接結びつくものではありません。

四つん這い立甲に係る注意点 ~ 骨格構造、重力方向の違い等 ~

人とチーターでは身体に掛かる重力方向が違います。

当然、
抗重力筋等により身体各部にかかる緊張・弛緩の初期状態 が異なります。

抗重力筋の作用 : 姿勢保持のため常に緊張・弛緩し、身体バランスを調整する。

  • 正しい状態 ⇒ 身体の歪みを調整する。
  • 悪い状態   ⇒ その状態を記憶し、身体を歪める。

また、
人は、四つん這いになることによって主に腰椎への負担が増大します。

なぜなら、
人の腰椎は前弯(幼児期に変化)であり、
チーターの腰椎は後弯しているからです。

四つん這い立甲トレーニング時の腰椎への負担

人の腰椎は、鉛直下向きの力に対して高い強度を示します。
しかし、
四つん這い時の重力方向の負荷に対しては脆弱であるため、故障リスクが高くなってしまいます。

仮に、
立甲習得のために四つん這いになるならば「腰椎のケア」が重要になります。
⇒ 保護ベルトを使う or 長時間行わない等の対策が必要

ちなみに、
赤子の腰椎も後弯(ブリッジ構造)であり、
四つん這いでハイハイをするには構造的に適しています

ハイハイ時期の赤ちゃんの腰椎は後弯

二足歩行である人は、
まず最初に足の機能発達が生じそうなものですが、
実際には 手の機能発達の方が先 に生じます。

これが何を意味するのかを考え、理解できれば、立甲が自然と生じる身体状態の重要な要素に気づけるでしょう。

個人的には正直、床に手をつくことは衛生的にも遠慮したいところです。
仮に自重を利用するとしても、机やテーブルで十分です。

※ 下画像は欠陥立甲トレーニングの例ですが、手首の過伸展による弊害の解消法等を知っていれば問題はありません。

欠陥だらけの四つん這い立甲とテーブル立甲

日常生活・仕事・スポーツ等における人の姿勢は基本的に立位・座位ですから、立位・座位でゼロポジション・立甲を活用できるようにすべきです。

それができれば骨盤アーチの力の活用も容易になります(肩甲骨・骨盤は連動する)。

立位・座位における骨盤アーチの力の伝達

上半身の重みは、
立位では股関節から大腿骨に、座位では座骨に伝わります。

骨盤アーチを活用した体幹から四肢への円滑な力の伝達はスポーツ・武道において大変有用ですから、できる限り立位・座位で立甲の活用法を模索する方が有意義といえます。

チーターは筋肉・筋力をしっかり使う

チーターの地上最速のハイパフォーマンスは、
筋肉がしっかりと収縮し、筋力を発揮しているからこそ発揮できるものです。

それでは、
それを示す事実(派生事実含む)のうち、立甲の即時活用に資する主なものをピックアップしましょう。

  1. チーターは常に爪を出している。
  2. 接地は肉球で、そこに圧が加わると深趾屈筋が短縮する。
  3. チーター前足の回内・回外可動域は狭い(虎・獅子等他のネコ科動物の約1/3)。
  4. チーターの最大回内位における橈骨・尺骨の遠位端配置は、肘の腕尺関節の回転軸と平行に近い。
  5. 接地・加重中、前足首(人:手首)の軽度背屈が保持され、手根骨の固定を回避。
  6. 爪で地をスパイクする。

上記だけに絞っても、
これらがチーターの高安定性・高効率連係・高出力等の実現に寄与している事実が分かるでしょう。

あとは、
人が成長に伴い損なってしまった上肢の状態を、
チーターや猫・人の赤子の「それ」に近づける際の「人特有の注意点」を理解し、
誰もが短時間でその活用を実現できる「すべを考える」
だけでよいことになります。

チーターの立甲の本質 ~ 身体連係の「鍵」~

四肢動物が「生来有する【力】」は、事実に着目すればそれを活用するすべを簡単に見出すことができます。

それでは、立甲において重要な要素となるチーター・猫・人の前腕の状態を確認しましょう。

チーターの立甲の本質 爪 深趾屈筋 短縮

チーターだけが、成長しても【生来の前肢の緊張・弛緩状態を保持】していることが分かります。

この深趾屈筋の短縮がいかに重要かは、
「猫」のこともプラスして考えていくと簡単に分かるようになっています。

チーターの立甲の本質 猫 爪

猫や虎、ライオンなどのチーター以外のネコ科動物(生後間もない頃を除く)は、普段、前足の爪は出ていません。

しかし、
猫もチーター同様に、獲物を追う、全速力で逃げる等、
身体能力を最大限発揮すべき場面においては、構造上必ず爪を出します(深趾屈筋短縮 & 腱伸張)。

爪で地をしっかりとスパイクする下準備がなされていることが簡単に理解できますね。

そして、
これが高効率連係・高安定性・高出力に繋がることとなります。

チーターの立甲の本質 赤子 深指屈筋

人も、赤子の頃は誰もがチーターと同様に深指屈筋が短縮しており、一定の筋長を保持していました。
言うまでもなく、それが付着する筋・腱・膜にも影響を与えています。
機能発達前とはいえ、赤子の頃は回外もできません。

さて、
深指屈筋について確認すると、一般的には下記の通りです。

  • 前腕の深層筋
  • 前腕で最も大きく、力が強い
  • 作用:第2~5指の指節間関節の屈曲 = 把持する際の指の力に関与(ネコ科は爪でスパイクする際の力)
  • 起始:尺骨近位3/4の前内側 = 尺骨(前面)および前腕骨間膜
  • 停止:第2~5指の末節骨底
  • 神経支配:正中および尺骨神経(C8、T1)= 複合筋

深趾(深指)屈筋の短縮は、上記の一般的な作用にとどまりません
一定の「筋長」を保持していることに着目しましょう。

チーターの立甲の本質 前腕の状態

獣医学会で発表した研究者らが考察しているように、
上画像①・②の「高速走行時の手根関節の安定かつ円滑な伸展-屈曲に有利」ということに関しては、
事実に着目すればどういうことなのかはすぐに分かりますね。

一つの筋肉に着目すると、明らかに一定の筋長を保っている。

付着する筋・腱・膜はどういう状態か?

それに伴う優位な神経系は?

など、事実・知識に基づいて考えていけば簡単でしょう。
というわけで、詳細はここでは割愛します。

重要なことは、
一定の筋長の保持から生じる「制約」が、上肢・体幹のリミットブレイクのカギであることです。

チーターの立甲の本質 手首の軽度背屈保持 〇〇〇〇〇の〇〇部

手首の軽度背屈の保持により、言うまでもなく、手関節からの上行性運動連鎖が制限されます。

手関節 上行性 運動連鎖

四足歩行動物の大半が接地・加重時に「手首の軽度背屈」を保持しています。
手関節からの上行性運動連鎖による近位への影響が抑えられるのですから、高安定性に結びつくことはすぐに分かりますね。

特にチーターは、深趾屈筋の筋長を生来の範囲(→ 前腕の回内・回外可動域を他のネコ科動物の約1/3に繋がる)で保持し、身体状態を【四肢・体幹の高効率連係・高出力が生じる範囲】に保っています。

チーターの立甲の本質 前肢・体幹の連係に係る身体状態の認識等

チーターの立甲に係る【力】をスポーツに即時に活用するためには、上記の理解が最も近道です。

理解した上で知覚・認識・把握の過程を踏めば、拙いながらもその身体状態が自動で働くようになります。
その後は、人特有のポイントを押さえた上で練度を高めればよいだけです。

できるだけ早く練度を引き上げるには、日常生活動作においてその【力】が反射発動するよう「然るべき意識、然るべき部位」にタネを仕込んでおくようにすればよいのです。

なにより、
理解を深めておけば、自身の身体の不具合の改善や、スポーツ等におけるスランプ状態からの脱出など、自身の調整によって容易に行えるようになります。

チータの立甲に係る出力方法

チーターの立甲に係る出力方法に関しては、事実・知識に基づきながら簡単に見ていきましょう。
着目すべき要素としては、以下になります。

  1. 常時:四肢の【深趾屈筋短縮 & 筋・腱・膜伸張】
  2. 接地・加重時:更なる【深趾屈筋短縮 & 筋・腱・膜伸張】
  3. 離地直前:爪で地をしっかりスパイク

なお、上記2に関しては他にも超重要要素がありますが、これに関しては自身で事実・知識・知力を駆使して下さい。
事実確認・情報整理の時間が惜しい方は知っている人に聞くなどするとよいでしょう。(大和神流では零式講座による)

チーターの立甲の本質 伸張性収縮

胴体が前に出ることで、地に食い込んだ爪が離地直前に反らされることとなります(= 深趾屈筋伸張性収縮)。
速く走れば 「爪でしっかり地をスパイクできる強度の深趾屈筋短縮が生じ、急激に爪が反らされる」が繰り返されることになります。

伸張性収縮に関しては、下記のような特徴があります。

  1. 筋繊維の力が倍増(約2倍)し、筋肉が非常に大きな力を発揮できる
    ※ 深趾屈筋に係る力 ⇒ パワーグリップ
  2. この力は、筋肉が引き伸ばされる速度が高くなるほど大きくなる(走行時等)
  3. ある速度、ある力を越えるとリミッターにより急激に力が発揮できなくなる(抜き等にも活用可)

チーターや猫が、いかに効率よく筋肉を活用しているかが分かるでしょう。

前述の通り、チーターは成長しても「生来の上肢の状態を維持している」という前提があります。
そのため、人がその「力」を活用するためには、何が必要かをしっかりと考えることが重要になります。

とはいえ、
この時点でも、上肢の状態を整えるための「力」や、接地・加重によって受ける力の「代替となる力」などが必要となろうことなどは、想像に難くないでしょう。

なお、直接特定の筋肉を収縮させようと意識するのはNGです。
理由は、神経系の「ある特徴」によって余計な力みに繋がることが明白なためです。

ではどうすればよいのか? 、、、と、その前に、四つん這い立甲トレーニングのデメリット等について簡単に見ておきましょう。

四つん這い立甲トレーニング デメリット 弊害

まずは、人の四つん這い立甲トレーニング時の状態を確認し、
前述のチーターの身体状態と比較してみてください。

立甲 四つん這い立甲 トレーニング デメリット

①・②については詳細解説の必要はないでしょう。
チーターの立甲時と異なる筋・神経活動であることが明白ですから、チーター同様の上肢・体幹の連係や肩甲骨・骨盤連動が生じるはずもありません。

③の「手首の過剰伸展」についても詳細解説不要ですね。
そもそも、人の手首の背屈可動域は70度ですから、それ以上(過伸展)だと大きな影響が出ようことはすぐに分かりますね。

背屈による手首への影響

  • 0~45度:舟状骨・有頭骨が締まる。
  • 45度以上:舟状骨・月状骨が締まり、手根骨全体が固まる。
  • 70度以上(完全伸展・過伸展):橈骨とTFCCに対しても手根骨が締まる。
  • 手の筋肉・腱 ⇒ 過緊張・過剰筋収縮状態になる。

筋・腱等の過緊張・過剰筋収縮状態は、リハビリ医療現場において、運動・感覚機能回復にネガティブな影響を及ぼすことが知られています。

同時収縮が起きると運動パフォーマンスに直結する運動感覚(特に位置覚・運動覚)の精度が低下します。
つまり、
手腕の位置・動きに関する【意識的な気づき】が損なわれます。

手根骨が固まると、手の内在筋・外在筋の優れた機能や連係による身体調整作用が制限されるので注意が必要です。

危険性を簡単に説明すると、
手首の衝撃吸収力が損なわれてしまう、すなわち、転んで手を着いた時、手首の過伸展状態だと骨へのダイレクトの衝撃で、橈骨遠位端骨折とかが生じ易くなるよ、ということです。

④の「上肢・体幹の相関」については、理学療法基礎などを調べればすぐに分かることですから、やはりここで詳細解説をする必要はないですね。
というわけで、サラッといきます。

チーターや猫は、歩行・走行時に必ず握力に係る筋力を使います。

よって、
握力に係る筋・神経活動が必ず生じます(※ 深趾屈筋の収縮は明白)。

握力と有意な正の相関関係が認められる前肢(上肢)の筋力は、医学研究結果等より下記の通り。

  1. 肩甲胸郭関節関与筋(特に前鋸筋 = 肩甲骨外転・上方回旋)
  2. 上腕二頭筋
  3. 肩関節屈筋群

なお、
医学研究結果はあくまでも人の健常者での実験によるものです。
つまり、
チーター・猫や人の赤子の頃の「パワーグリップとは異なる」ということです。

人が握力を計る際に使われる筋力と、チーターの純粋パワーグリップで使われる筋力とでは、ある事実において明確な違いがあることは明白です。
よって、その点を考慮する必要があります。

また、
四つん這い立甲トレーニングには、前述の通り、腰椎への負担や抗重力筋の初期状態の違い等の注意点もあります。

いずれにせよ、
人が立甲する身体状態を短時間で得て、かつその恩恵をスポーツ等に活用するためには何をすればよいか、しっかりと頭を使って考えるようにしましょう。

たとえば、下記についてはどうでしょうか?

四つん這い立甲トレーニングによる立甲習得に際して、
「四つん這いになって手をつき、脱力して腕の骨で胴体を支える感覚を掴もう!」
などと考えてしまう、、、

そもそも
チーターには鎖骨がありません。
腕と胴体の接続は肩甲胸郭関節に係る筋・腱・膜等によるものであり、骨での接続はありません。

猫はというと、鎖骨が退化して小さくなり機能していません。

、、、腕の骨で胴体を支える感覚を掴む必要が、本当にあるでしょうか?

すなわち、
チーター・猫などが立甲時に必要としていないことの感覚を掴む必要があるのか、ということです。

他にも、
「上腕骨がしっかりと肩にハマって骨で支える感覚」
、、、などもありますね。
しかし、
骨と骨がぶつかるようなことは、骨・軟骨等が摩耗することに繋がり故障を誘発するため、通常は避けるべきものです。

本来であれば、
筋腱膜の活動によってしっかりと張力を生じさせ、骨と骨との間の隙間を保持し、関節が円滑に動くようにすることの方が大事です。

ここで重要なことは、、、と、
これについては自身で答えを出した方が後々の役に立ちます。
事実・知識に基づいて、しっかりと考えるように心がけましょう。

立甲のやり方・習得方法等に関しては、純粋パワーグリップを知ることから始めればよい訳ですが、これに関しては事実・知識に基づいて考えましょう。
時間が惜しいと思うのであれば、他に知っている人や理解している人に聞く、また必要に応じて講座等の受講を考えればよいでしょう。

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